■参列者に案内する際の注意点
家族葬では費用の問題や、プランによって利用できるホールや部屋の広さにも制約があるため、どの範囲で参列してもらうかがまず問題です。
同居の家族や配偶者、子どもといった身内だけに限定するケースもありますが、一般的には故人の兄弟姉妹やその子ども、つまり姪や甥などで故人とゆかりの深い親族や、頻繁に行き来をして交流があるような親族がいれば、参列してもらうというご家庭も少なくありません。
どの範囲で参列してもらうかは、そのご家庭の事情や親族との交流の深さなどにもよりますが、親族が多く、誰かに声を掛けたら、一般葬並みに親族が訪れることが予想されるような場合には参列を案内する方法に気を払う必要があります。
たとえば、今回は家族葬なので親族は故人とその配偶者の兄弟姉妹や姪甥までに限定し、それ以外の方は基本的に遠慮するなどと線引きをします。
喪主の方がいちいち案内するとなると気ぜわしい中で大変なので、喪主以外のご家族が行うか、親族代表を決めて信頼ある方や一族を取りまとめているようなリーダーシップのある方にどの範囲で呼んで欲しいかを伝えて、仕切ってもらうといいでしょう。
意向を汲んだ代表の方が参列をする範囲の親族には日程や場所を伝え、それ以外の方には家族葬なのでごく限られた親族のみで行う旨を伝えて、お香典や供花、弔電などの辞退や調整なども図ってもらいましょう。
■弔問も辞退するのか
家族葬ゆえに誰にも気付かれずひっそりやるものと決め込んでしまう方がいますが、ご事情があっての密葬などとは異なり、家族やごく近しい親族だけで小規模な葬儀を執り行うことと、故人への最後のお別れとしての弔問を受けるかは少し切り離して考えるのがおすすめです。
もっとも、煩わしいことを回避したい、大げさになることを回避したいという目的で家族葬を選んだ場合には、弔問客が次から次に訪れるのも困りものです。
この場合は弔問の範囲も限定するのがよいでしょう。
具体的には取引先をはじめ、広く一般には家族葬である旨と弔問も辞退する旨を伝えた上で、故人と親しくしていた方には直接お電話するなどして亡くなった旨を伝えます。
家族葬なので参列は辞退する旨を伝えながらも、先方から希望があれば、最期にお顔を見て直接、お別れができるよう配慮して差し上げるのがよいでしょう。
喪主としては家族葬だから家族や親族以外はNGといった気持ちもわかりますが、故人とお知り合いの関係性や交流の深さはご遺族だけでは推し量れないところもあります。
ずっと親しくしてきたのに最期のお別れもできずにご遺骨になるとなれば、悲しい思いをされる方もいらっしゃるので、ごく親しい方の弔問は拒否せずにお受けするのがベストです。
いかに初期の段階で弔問をお断りしても、亡くなった段階や葬儀に参列されない方は新盆見舞や初彼岸、命日などに弔問を兼ねて訪れる場合や、香典や新盆見舞などを送ってこられる方が多く、来訪者への対応を先延ばしするだけとなります。
その際に最期に会いたかったなどと悲しまれないよう、故人と親しかった方をあらかじめリストアップしたり、亡くなった際に携帯電話の履歴を確認したり、一緒に暮らしてきたご家族から交友関係などをリサーチして、誰にすぐに訃報を伝えるのかを考え、連絡を取りましょう。
■町内会への案内は地域による
故人が暮らす住まいが属する町内会に対して、どのような案内をするかは暮らしている地域の風習や町内会などのルールに従うのが基本となります。
都心部などで町内会が機能していない、所属していないとか、近隣に誰が済んでいるのかもわからないマンション住まいであれば、とくに近くに案内する必要もなく、全くの秘密裡に葬儀を行うこともできます。
とくに病院から葬儀場へとご遺体を直接搬送して安置するケースでは、ご自宅へのご遺体の出入りやご親族の出入りなどもないので、近隣の方に気付かれずにひっそりと葬儀ができることでしょう。
一方で、町内会の活動が活発な地域や、古くからの風習などが残されている地方に暮らしている場合には、地域の実情に配慮しましょう。
とはいえ、最近ではどの地域でも家族葬がメインになり、町内を挙げて葬儀を行うとか町内会主導で葬儀を行うケースは少なくなり、そういった風習が残る地域でも家族葬であることを告げると、参列などは辞退するという環境も整いつつあります。
それでも、町内会によっては必ず代表者が町内に住む方から香典などを集めて代表して弔問に訪れる場合や、葬儀に参列するといった風習や町内ルールがある場合もあるので注意してください。
今回、ご家族が亡くなったことで誰もその家に住まなくなり、いずれ売却や解体などを考えているといった場合は別として、その後も残された配偶者やお子様などが継続して暮らすといった場合や、親族が移り住んでくることが想定されるケースでは、あまり町内に逆らい過ぎず、最低限のお付き合いをしておくと、その後の生活がスムーズにいきます。
家族葬への参列はお断りした上で弔問だけは受けるとか、代表者からだけ弔問または参列を受けるなどを、町内会の伝統や風習に配慮しつつ検討しましょう。
わからないことがある場合や、どうしたらいいか迷った際には町内会長さんや、ご近所で頼れる方、町内で幅を利かせているような方に相談されるといいでしょう。
また、町内の中に故人ととくに親しくしている方がいる場合には、町内会への案内や参列の可否とは別にお伝えするのが賢明です。
長年にわたって親しくされており、お互いの家族の葬儀などでも香典のやり取りをしてきたといった間柄の方には、弔問をしてもらうことや、希望があれば家族葬にも参列していただきましょう。
■互助会を利用している場合
故人さまやそのご家族が、事前に掛け金を払って積み立てることで低廉な価格で葬儀を執り行うことができる互助会に加入している場合、その互助会を通じて葬儀を行う場合、連絡すればすぐに対応してもらえます。
よく生前に葬儀社を選ぶ方や、自分の葬儀プランを計画する方がいますが、互助会はその生前の意思を実現させる手段にもなり得るのです。
一方、互助会のシステムは掛け金を払っていた本人だけでなく、そのご家族の葬儀であっても利用ができるようになっているので、ご遺族のどなたかが加入していた互助会を通じて低廉な費用で葬儀を執り行うこともできます。
一方で、加入していた互助会では希望するスタイルの家族葬プランがないという場合や、喪主の方のご意向により別の葬儀社に頼みたいなどの場合には利用しなくてもかまいません。
故人が互助会の掛け金を支払っていた場合をはじめ、今後もほかに利用する予定がなければ、互助会の解約をして今後の掛け金の支払いをストップされるといいでしょう。
これまで掛け金については葬儀に利用しない場合でも、全額は戻ってきません。
あらかじめ定められた一定の解約手数料が控除されて、返金されます。
なお、互助会は割賦販売法第12条の規定に基づいて、経済産業大臣の許可を得て設立された団体であり、経済産業省の指導・監督を受けて策定された標準約款・モデル約款に準拠して解約手数料なども公正に設定しています。
互助会の設立には最低2000万円以上の資本金が求められ、払いこまれた掛け金については割賦販売法に基づき前受け金の2分の1を供託等により保全しなければなりません。
法務局または経済産業大臣の指定する指定受託機関(保証会社)か銀行に供託がなされているので、万が一、葬儀で利用しようとした際や解約の申し出にあたり、互助会の経営破綻などがあった場合でも最低限の返還が期待できます。
■家族葬における会社への報告
日本の会社の風習として、大手企業においても設立の古い会社や古い風習が受け継がれている企業では、社員の親や義理の両親、配偶者や子どもなどが亡くなった場合には社内の掲示板で公開したり、部署でメールなどを流して通夜や葬儀に出席したり、香典を集めて代表者が持参したり、花輪やスタンド花などの弔花を〇〇会社一同などの名前で届けたり、弔電を打つというのがよくあるパターンです。
故人の方が現役で会社での勤務中に亡くなられた場合などは、家族葬の形態を採る場合であっても、親しくされていた方に弔問をしていただくことや、代表の方に家族葬に参列してもらうのがよいでしょう。
勤務中に亡くなられると弔慰金や死亡退職金などの支払いもある会社も多いため、職場の方との関係性も円滑に保っておいたほうが安心です。
一方、定年退職したからだいぶ時間が経っているといったケースや、故人ではなく、喪主の方やそのご家族の会社からの弔問や家族葬への参列はお断りするのが基本です。
故人の方と直接つながりがない範囲まで弔問や参列となれば、家族葬にした意味も薄れてしまいます。
その際には香典の辞退をはじめ、あまり派手にしたくないのであれば供花や弔電なども遠慮しましょう。
逆にお花くらいはお願いしたいということであれば、供花の申し出はありがたく頂戴します。
なお、家族葬だし、香典や供花、弔電なども辞退したいから会社に秘密にしておくというのはNGです。
会社には慶弔休暇制度が設けられているのが基本で、たとえば、親や配偶者、子どもが亡くなった場合には通常の有給休暇とは別に1週間程度の弔休を得ることができます。
また、会社に勤務することで加入している健康保険制度から葬祭費や埋葬金といった名称の給付金が出ます。
会社によっては独自の葬祭補助金や弔慰金などを用意していることもありますので、家族葬であるか否かや葬儀のスタイルを問わず、会社への報告は行うようにしてください。
社会保険制度や会社に勤務することで支援が受けられる権利でもありますので、家族葬でひっそり行ったからといって辞退する必要もなければ、気持ち的に遠慮することもありません。
■故人を偲ぶ会やお別れ会を別途行うケース
家族葬を行ってそれでおしまいになるケースもあれば、突然の逝去やご家族のご事情に伴い、取り急ぎ家族葬で葬儀を済ませた後、改めてお知り合いの方や故人やご遺族の関係者などを集めて偲ぶ会やお別れの会を開催するというケースもあります。
故人のご意向で、身内だけで地味な葬儀を行いたいご遺志がある場合や、費用面などから家族葬を選ばれたケースであれば、別途、偲ぶ会などを行う必要はありません。
一方で、故人の社会的な地位やお立場によっては後日改めて、生前にご縁があった方にお別れの機会やご焼香の機会を設けるのも1つの選択肢です。
故人さまの病状が思わしくなかったりして、最期のお姿を広くは見せたくないといった事情で家族葬を済ませた上で、改めて偲ぶ会やお別れの会を開くことを予定されている場合などは、亡くなった事実を伝え家族葬ゆえに参列をお断りするご案内にプラスして、後日、偲ぶ会を予定していることをご案内しておくことで、亡くなった直後の弔問を抑えることや、香典がどんどん送られてくるといった事態を防ぐことができます。
ご遺族の方がとくに希望されていない場合でも、ご友人や仕事関係者などのご意向があり、どうしても偲ぶ会を開きたいといったお声があり、そのお気持ちをありがたく頂戴することを決めた際には、ご遺族との日程を調整の上、偲ぶ会の開催や運営についてはご友人やご関係者の有志にお任せしてもかまいません。
■喪中ハガキや届いた年賀状や暑中見舞への対応について
家族葬の場合、参列や弔問の辞退を伝えるか否かを問わず、亡くなったことを知らせる範囲も近しい親族と近しい親友やご近隣の方にとどまり、その範囲を超えるとお知り合いであっても亡くなったことも広くは伝えないケースが一般的です。
たとえば、一緒に出掛けたり、頻繁に食事をしたりと日頃から交流のある方にはお伝えしても、年に一度年賀状をやり取りする程度の方は、ごくたまに電話で話す程度の関係の方には後日改めてお伝えします。
その際の案内に使う手段として代表的なのは喪中ハガキです。
今年に亡くなったことと生前のお付き合いに対する感謝の気持ちなどを伝え、新年のご挨拶は遠慮する旨をお伝えします。
一方、亡くなったことを知らずに故人宛てに年賀状や暑中見舞のハガキが届いた場合には、ご遺族が代わって寒中見舞や残暑見舞のハガキを出して、亡くなった旨と生前の交流やご支援への感謝を伝えましょう。
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