■家族葬だからと勝手な思い込みはNG
家族葬は家族だけだから何でもありとか、自由に行えばいいという発想をお持ちなら少し考え直す必要があります。
家族葬はあくまでも死者を弔う儀式の1つの新しいスタイルであり、生前に交流を持った多くの方が集まって行う一般葬や社葬、古い地域などに多い町内や地域を挙げての葬儀に代わる、核家族化や高齢化、地味葬ブームなどから生まれてきた現代の葬儀スタイルです。
あくまでも死者を弔うための葬儀であり、亡くなったご家族を仏教でいえば極楽浄土へと導き、キリスト教であれば天国へと召されるための厳粛な儀式を行う場に変わるところはありません。
そのため、家族だけだからとか、ごく親しい親族しか集まらないからと礼儀やマナーにルーズになるのは死者や神仏への無礼になったり、同じ会場で葬儀を行う方に不快感を与えたり、葬儀社の方も戸惑うことがありますので注意しましょう。
■家族葬でも喪服は着るべき?
家族葬であっても、死者への弔いの気持ちを込めて派手な衣装は避け、喪服を着用するのが基本といえます。
男性の方なら黒や紺のスーツに黒のネクタイ、女性なら黒のワンピースか黒の喪の和服、地域や家系の風習に応じて白の喪服を着用しましょう。
制服がある学生さんなら学生服で問題ありません。
制服がないお子様は白のブラウスに黒やグレーのスーツやワンピースなどを着用させましょう。
お子様向けのフォーマルウェアがなく、すぐに準備もできないといった場合、家族葬であることも踏まえ、黒やグレーのカラーや地味な服装であれば問題ないでしょう。
子ども、大人問わず、赤などのおめでたいカラーや派手な色は避け、ゴールドをあしらったバッグやアクセサリーなどは持たないように気を付けましょう。
家族葬で他の人の目がないからいいではなく、あくまでも亡くなった大切な家族を天国へとお見送りするための儀式に備えた服装と認識して準備をされてください。
■家族葬で気を付けたいマナーとは
家族葬で配偶者やお子様などごく小人数の家族で行う場合は、家族どうしのマナーはともかく、死者への経緯や弔いをしてくれる僧侶など宗教家への礼儀、家族葬をサポートしてくれる葬儀社のスタッフへのマナーなどが求められます。
当然ながらご遺体を粗末に扱わないという点をはじめ、ご家庭ごとの宗教や宗派に基づき、葬儀までに行うべきことを実行したり、葬儀当日の宗教家への挨拶やお礼を丁寧に行ったり、葬儀社スタッフへの感謝の気持ちなども忘れないようにしましょう。
葬儀まで自宅でご遺体を安置している間には、仏教の場合、亡くなった日はお線香を絶やさないことや、毎日枕飯をお供えすることなどが風習や作法として残されている場合があります。
面倒だからとやらないというのもありですが、ご家庭で代々続いてきた風習を絶やしてしまわないのも、亡くなった方やご先祖さまに対するマナーといえるかもしれません。
親族も家族葬に参列してもらう場合のマナーとしては、親族の親等の近さや日頃からの関係によっても違ってきますが、とくにご年配の方への配慮や遠方からお越しいただく方への配慮が求められます。
ご年配の方でお体の調子が悪かったり、車椅子や杖が必要なご状況にある方には無理して参列をしていただくのではなく、お気持ちだけ受け取る旨をお伝えしたり、それでも足を運んでくださった場合には丁重に感謝して、椅子の用意など配慮しましょう。
遠方からお越しくださった方にはお車代をお渡しし、宿泊されるホテルなどの手配とホテル代の支払いを行いましょう。
ホテルの手配については葬儀社にお願いすると、地域で近場のホテルをすぐに予約してくれます。
近隣に住んでいる親族や親等も近く日頃から交流がある親族については、弔問客への対応やお茶出しを手伝ってもらう場合や、他のご親族への連絡や調整などをお願いしても問題ありません。
その代わりとして葬儀の終わりや後日、心ばかりでもお礼をお渡しするのがマナーです。
■家族葬で準備すべきものとは
家族葬のプランには通常、祭壇や最低限の生花や果物などの供物、仮のご位牌や枕飾りや後飾り、焼香台や遺影の作成代、棺や骨壺の費用などもコミコミになっており、葬儀社がすべて一式用意してくれるので、とくにご遺族が準備すべきものは数多くはありません。
最低限の準備で後はすべて葬儀社にお任せできるので安心です。
遺影の作成はプランの予算で行うことができるのが通常ですが、遺影を作るためのベースとなる写真やデータは準備する必要があります。
生前に遺影を撮影されているのであれば、それを準備して葬儀社のスタッフに渡しましょう。
遺影にできるような写真がないという場合も、焦る必要はありません。
どんな写真やデジカメやスマホのデータでもいいので、亡くなられた方が写っている写真さえ見つかればどうにかなります。
すでに現像されている昔の写真でも、ご家族やご友人と一緒に写った写真や、職場の方との集合写真でもかまいません。
現代の技術にかかれば、周囲の人物や背景を消すことができ、一人だけの状態を作りだせます。
さらに髪型や顔色の調整から、写真で身に着けている服装まで変えることができ、洋服を和服に着替えさせることまで加工技術でできてしまうので、とにかく何か1枚写真を探し当てましょう。
家族葬でも一定の親族に参列してもらう場合は、香典の返礼品の準備が必要です。
返礼品はカタログから選べば葬儀社のほうで手配してくれますが、最初にどのくらいの数を準備すればいいのか、参列が予定されるおよその親族の人数をカウントして葬儀社に伝えましょう。
また、葬儀会場から火葬場までが離れており、親族が遠方から電車などで来る方が多いという場合にはマイクロバスやハイヤーなどの手配も必要ですので、併せて葬儀社と打ち合わせを行い、必要に応じて準備してもらいましょう。
葬儀の際に住職に読経を依頼するといった場合には、住職へのお布施の用意が必要です。
現金の準備のほか、お布施を入れる封筒や半紙などを準備し、お布施と筆書きして準備しておきましょう。
葬儀社に渡す代金については一部前払いのケースや、すべて後日に精算するケースなどがありますが、いつでも払えるよう現金の準備が求められます。
なお、一部の業者ではクレジットカード決済が可能な場合もあるので、ポイントを貯めているといった方は事前に支払い方法についても確認しておくといいでしょう。
現金を準備する場合、喪主やご家族の方のお金を使うのであれば問題ないですが、故人さまの預貯金を充てたいといった場合、死亡の事実が金融機関に知られると預貯金の口座が閉鎖され、遺産分割をして正当な権利を持つ相続人しかおろせなくなってしまいます。
そのため、訃報が新聞に掲載された場合や、ご近所などに亡くなったことの案内や掲示板への掲示を行う前に、故人さまのキャッシュカードの暗証番号がわかっていれば現金を引き出しておくのが賢明です。
職場の健康保険や国民健康保険からの葬祭費用や弔慰金などの支給は、葬儀後や死亡後に一定の手続きを経て請求と支給が行われますので、当面の費用としては利用できないので資金の準備については、どの資金を当てるのかよく検討しましょう。
■家族葬で必要になるものを確認しよう
家族葬で必要になるものとして、他の葬儀のスタイルにも共通しますが、葬儀社に払うお金や僧侶などに渡すお布施のお金をはじめ、死亡診断書も欠かせません。
死亡診断書は亡くなった際に立ち会って死亡を確認した医師が記載します。
病院のご遺体の霊安室からご遺体をご自宅や葬儀会館などへと、葬儀社の車を通じて移送する場合、死亡診断書がご遺体とセットでないと葬儀社は搬送ができません。
遺体の遺棄などの犯罪にならないよう義務付けられているもので、移送するお車に乗られるご遺族が常に死亡診断書を携帯した上で、ご遺体を安置場所まで搬送してもらいます。
安置が済んだ段階で、死亡診断書を持って役所に死亡届を提出しなければなりません。
もっとも、この手続きも葬儀社のスタッフが代行してくれますので、お願いするといいでしょう。
死亡届についてはお住まいの地域の役所で24時間365日体制で受け付けており、いつでも提出することができます。
死亡届に代えて火葬許可証が発行され、それがないと火葬ができませんので葬儀社から手渡された際には失くさないように保管し、火葬時にすぐに出せるように常に持ち歩いてください。
葬儀社のスタッフが保管して火葬時に手渡してくれることもあるので、葬儀社の方と確認の上調整しましょう。
葬儀の際の通夜振る舞いや精進落としの食事などは、家族葬においては必ずしも必須ではありません。
もっとも、遠方から親族がわざわざやってきてくれる場合には、お食事を用意するのも1つのマナーや礼儀でもありますし、葬儀の機会に親族の交流を深めたい場合や、故人を偲びたい場合には飲食の場も設けたいところです。
家族葬の場合、料理やお酒などの手配はオプションとなっているケースが多いので、必要に応じて必要な量をオーダーしましょう。
通夜振る舞いは通夜を終えた直後、精進落としは火葬を行っている待ち時間や火葬をした後に会場を移して用意します。
内容的には精進料理を中心とした野菜がメインのお惣菜や、和食が基本ですが、四足歩行の動物は避け、刺身や寿司、天ぷらなどの形で魚介類などは供されます。
通夜振る舞いまでの時間が遅くなってお腹が空きそうなときには、茶菓子やパンなどの軽食を準備しておくのもおすすめです。
葬儀社で茶菓子類を準備してくれることもありますが、お茶や飲み物の用意しかない場合もあるので、必要に応じて茶菓子を準備しましょう。
■飲食の提供や返礼品のマナー
同居の親族などだけであれば食事もせずに、自宅で済ませてもいいですし、返礼品の準備も必要ありません。
ですが、近しい間柄でも親族が参列される場合にはお食事や宿泊場所の準備をはじめ、頂いたお香典に対する返礼品の準備も必要です。
通夜見舞と告別式へのお香典に対して、それぞれ用意するのがマナーで、通夜のほうは低額のちょっとしたものでいいですが、お香典への返礼品は故人の社会的な地位や立場、親族との葬儀時のやり取りなどを通じて相応の物を選ばれるのがベストです。
返礼品は葬儀社がカタログを用意してくれるので、その中から選びます。
また、最近ではギフトカタログというタイプもあり、カタログを返礼品としてお渡しし、それぞれの方がご自身の好きなものをカタログの中から選ぶというスタイルも人気になっています。
最近の若い方の間では人気のスタイルですが、ご年配の方には選びにくい、使いにくいシステムでもあるので、参列する親族などのご年代や層に合わせて品物かカタログかを選びたいものです。
また、結婚式の引き出物と異なり、倍返しや豪華なものを返すというシステムではなく、香典の半返しが基本となるため、ご予算によってはカタログに掲載される品物が選びにくい低価格のものばかりや見栄えのしない物ばかりになるケースもあります。
返礼品1つあたりの予算が少ない場合にはカタログギフトよりも、値段がバレにくい品物にするほうが賢明でありますし、お相手への礼儀やマナーといえるかもしれません。
■弔問などを辞退する場合や亡くなった事実の連絡が葬儀後になる際のマナー
家族葬に伴い、葬儀への参列をはじめ、弔問や弔電、弔花や香典などを辞退されるケースもあるかと思います。
故人と親しい関係にあった方などにも遠慮をするという場合には、かえって最後のお別れができないと残念に思ってしまう場合や、悲しまれる場合もありますので、最大の配慮や敬意を払うことが大切です。
ごく親しい方には最後のお別れだけでもしていただくなど、家族葬といえど配慮するのもマナーですので注意しましょう。
ご遺骨になる前にお顔をひと目見たいと希望される方もいるので、ご遺族にはわからない故人との関係やその方の想いに心を向けることも大切です。
そこまでの関係にはない方には亡くなった直後ではなく、家族葬を終えてから案内されることも少なくありません。
そうした際にも香典などは辞退する旨を伝える必要があり、それでも弔問に訪れることやお香典などが送られてくることもあります。
その際に返礼できるよう常時、ご自宅にいくつか返礼品をストックしておくほか、送ってきた方には返礼品を発送する手続きを取るのがマナーです。
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